家づくりコラム
資金(ローン)について
2022.06.30
#nagomi
住宅ローンを組む際、単独名義で借りるのが普通と思っている方も多いかもしれません。
男性が外で働き女性が家を守るという時代においては、その借り入れ方法が最も適していたといえます。
しかし、現代は共働き世帯も多く存在し、実際に男女それぞれ夫婦で住宅ローンを契約したいという方もいます。
今回の記事では住宅ローンにおいて、夫婦で借りられるペアローンはもちろん、連帯債務型や連帯保証型の特徴をそれぞれ解説します。
それぞれの借り入れ方法がどのような特徴を持つのかだけでなく、メリット・デメリットについてもまとめるので、その点も含めて参考にしていただけると幸いです。
ペアローンとは1つの物件に対して夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約する方法を指します。
通常、1つの物件に対して1人の契約者が存在するというのが住宅ローンの王道です。
しかし、ペアローンの場合は夫婦2人ともが契約者となるわけです。
個別に債務を負うことになるだけでなく、お互いに連帯保証人となるため、イメージとしては「夫が妻を」「妻が夫」を支えるというかたちで借り入れる住宅ローンです。
つまり、住宅ローンが4,000万円であれば、それぞれ2,000万円ずつ契約して返済していくかたちを取ります。
当然ながら、夫婦別々に契約するため、どちらも団体信用生命保険への加入が必須となります。
団体信用生命保険に加入しないと審査に通らない金融機関も多いので、そこはどう借り入れすべきなのかきちんと検討しなくてはなりません。
その一方、住宅ローン控除なども夫婦それぞれ適用できるため、節税効果を得られるのも特徴です。
まさにペアローンは一長一短、長所も短所も持ち合わせた借り入れ方法といえるでしょう。
連帯債務型とは、夫婦のうちどちらか1人が債務者となって住宅ローンを契約する方法を指します。
そこに連帯債務者という存在がいるという借り入れ方法です。
つまり、メインとなる債務者が1人、サブとなる債務者が1人という状態で借り入れる住宅ローンとなるわけです。
ただし、メインの債務者とサブの債務者は同等の返済義務を負うため、扱いとしてはどちらも軸となる債務者といえるでしょう。
ちなみに、連帯債務型であれば主債務者と副債務者、その両方が団体信用生命保険に加入可能となっています。
ただし、連帯債務者はそれぞれの金融機関ごとに条件が異なるため、必ずしも夫婦2人ともが団体信用生命保険に加入しなくてはならないとも限りません。
そこは契約する金融機関ごとに確認が必要です。
なお、連帯債務型はメインの債務者とサブの債務者が同等の扱いとなるため、どちらも住宅ローン控除を受けられるという特徴があります。
ここも見逃せないポイントです。
連帯保証型とは夫婦のうちどちらか1人が債務者となって住宅ローンを契約する方法を指します。一見すると連帯債務型にも似た借り入れ方法といえるかもしれません。
しかし、連帯保証型は契約者の他に夫婦どちらかが連帯保証人となる必要があります。
当然ながら、債務者本人が返済できなくなった際、連帯保証人である夫もしくは妻がその責任を負わなくてはなりません。
それでいて、連帯保証型は連帯保証人という別枠での扱いとなるため、団体信用生命保険に加入できません。
そこは意外な盲点となっているので、契約の際に注意が必要です。
また、債務者本人は住宅ローン控除を受けられるのですが、連帯保証人は受けられません。
それらの制約がある点も理解した上で他の借り入れ方法と比較していく必要があります。
住宅ローンの借り入れ方法はペアローンと連帯債務型と連帯保証型があることはわかっていただけたかと思います。
しかし、それぞれにメリット・デメリットが存在するため、一概に「これが良い」とはなかなか言えません。
ここからは、単独名義も含めてそれぞれのメリット・デメリットをまとめるので、こちらにも目を通してみてください。
単独名義のメリットは、配偶者の負担を減らせることにあります。
夫もしくは妻のどちらかが単独で契約した場合、もう片方の配偶者は経済的負担を強いられることもありません。
そのため、どちらかが専業主婦(専業主夫)の場合でも問題はありません。
それでいて団体信用生命保険に加入しておけば債務者本人が死亡もしくは高度障害と認定された場合、ローン残高も肩代わりしてもらえます。
単独名義は団体信用生命保険の恩恵も最大限に受けられるのが強みといえるでしょう。
その一方、単独名義のデメリットに、どちらか一方の収支に依存してしまうことにあるといえるでしょう。
たとえば、夫や妻のどちらか一方の収入だけで住宅ローンを返済していくと、支出が増えた際に生活自体が破綻するリスクもあります。
また、団体信用生命保険に加入していたとしても、死亡や高度障害と認定されるかどうかは状況次第で変わるわけです。
必ずしも借金が帳消しとなるわけではないので、その点は気をつけておきたいところです。
ペアローンのメリットは、住宅ローンの借入額を増やせる点にあります。
住宅ローンは契約者本人の収入によって借入額が変わるのですが、夫婦で借りるとなれば単純計算で倍近くの借入額にまで増やせる計算となります。
もちろん、それは夫婦それぞれに安定した収入がある場合に限りますが、それでも借入額が増やせるということは、建てられる家も、より豪華なものを選べたり理想を詰め込めたりするということになります。
さらに住宅ローン控除も夫婦それぞれ受けられるため、こちらも通常に比べて最大2倍の住宅ローン控除を受けられます。
それだけでも大きな節約になるでしょう。
その一方、ペアローンのデメリットには、諸費用も2倍となってしまう点にあります。
通常は1人分で済む諸費用も夫婦で組むことで2人分かかります。
その分の経済的負担が増えることを考えると、必ずしもペアローンは魅力ばかりともいえません。
また、ペアローンでは夫婦のどちらかが退職・離職してしまっても支払いは変わりません。
さらに、失職した場合は住宅ローン控除も受けられなくなるため、妊娠・出産・育児・介護などの諸リスクにも備えておかなくてはならないでしょう。
連帯債務型のメリットは、借入額を増やせるという点にあります。
連帯債務型はメインの債務者とサブの債務者が同等の債務者として扱われるため、借入額もそれぞれの分だけ増やせるのが魅力といえるでしょう。
また、諸費用の負担を押さえながら住宅ローン控除を受けられる点も強みです。
これらは原則として契約が1本という扱いなので、それらにかかる諸費用も1本分で済みます。
その上で住宅ローン控除も活用できるため、大幅な節税効果も見込めるかもしれません。
その一方で連帯債務型のデメリットには、取り扱っている金融機関が限られているという点があります。
金融機関は数多くあるものの、連帯債務型に対応しているところはそこまで多くありません。
また、契約者本人とは別の連帯債務者に関しては、団体信用生命保険に加入できない場合もあります。
その場合はフラット35などほかの住宅ローンまで視野を広げて検討するのがおすすめです。
連帯保証型のメリットは、借入額を増やせる点にあります。
夫婦それぞれに安定した収入があれば、支出にかかわらず合算することで借入額を増やせます。
当然ながら、それによってより夢のマイホームにも近づけるかもしれません。
さらに、諸費用などの経済的負担は1人分で済むのも強みとなっています。
あくまでも連帯保証型は契約者本人が1本の住宅ローンを組むというものなので、配偶者の分の諸費用はかかりません。
その一方で連帯保証型のデメリットには、連帯保証人に限り団体信用生命保険に加入できず住宅ローン控除も適用できないという制約があります。
そのため、契約者本人に万が一のことがあった場合、残された配偶者の生活が困窮する事態も発生するかもしれません。
夫婦でローンを組む際、知っておかなければならないポイントがあります。
ここからはそれぞれが知っておきたいポイントについてまとめるので、併せて目を通しておいていただけると幸いです。
夫婦でローンを組んだ場合、やはり一番気になるのが物件の所有権です。
いわゆる買った物件は誰のものになるのかということですが、これは誰がその所有権を持つかによって異なります。
たとえば、ある夫婦によっては「建物は夫」「土地は妻」というかたちで分けて住宅ローンを組む方がいます。
そうなると、建物は夫名義で土地は妻名義となるわけです。
これらは死亡や高度障害で働けなくなった際はもちろん、離婚した際などにも大きな問題となります。
そのため、買った物件がそれぞれどちらのものになるのかは事前に話し合いで決めておく必要があるでしょう。
ローンによっては配偶者のどちらかが連帯債務者もしくは連帯保証人となるケースもあるはずです。
その場合、契約者本人だけでなく連帯債務者も連帯保証人も住宅ローン審査基準の対象となる場合があります。
特に、収入を合算させて借入額をアップさせる場合などは、夫と妻の両方について審査が実施されます。
当然ながら、住宅ローン審査は簡単に通る場合もあればなかなか通らない場合もあるため、夫婦でローンを組む場合はその審査も2倍の負担となる覚悟を持たなくてはなりません。
夫婦でローンを組む際、前述の通り住宅ローン控除をそれぞれ適用できます。
これらは別名で住宅ローン減税とも呼ばれるものなのですが、原則としては同じものを意味します。
どちらも住宅ローンの契約者が適用対象となるため、夫婦でローンを借りる場合はぜひとも2人とも活用したい制度といえるでしょう。
ただし、単独名義で2,000万円借りるのと夫婦それぞれ4,000万円借りるのとでは住宅ローン控除も大きく異なるため、夫婦でそれぞれどれくらいの恩恵を受けられるのかも事前に計算しなくてはなりません。
最後にペアローンと連帯債務型、連帯保証型はそれぞれどのような人に向いているのか見ていきましょう。
ペアローンは夫婦ともに安定した収入があって、なおかつ妊娠・出産・育児の後も復帰できることが見込める人に向いています。
特に、ペアローンの場合はどちらかが働けなくなった場合でも返済は続くので、職場を離れても復職できることが大前提となります。
特に何かしらの理由で収入が途絶えた場合は住宅ローン控除の恩恵も受けられなくなるため、イレギュラーな事態が合っても元通り働ける人に向いているといえるでしょう。
団体信用生命保険に夫婦どちらも問題なく加入できるようであれば、ペアローンを組んでもうまくやっていけるはずです。
夫も妻もどちらもリスクを抱えて生きているわけなので、そこは団体信用生命保険をフル活用できるよう準備を整えて契約しましょう。
連帯債務型は借入額を増やしたい一方で諸費用は減らしたい方に向いています。
実際に連帯債務型は諸費用が1人分で済む一方、収入を合算できるという特徴を持っています。
そのため、数年後に夫もしくは妻が仕事を辞めるということなら、連帯債務型を選んで主軸となる債務者とそれを支える債務者で役割分担するのがおすすめです。
その方法なら夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられるため、節税しながら生活の安定も見込めます。
連帯保証型は借入額を増やしたいという方に最適です。
契約者は夫か妻のどちらか一方となるものの片方が連帯保証人となることで借入額を増やせるため、より自分たちが思い描く住宅を作れます。
ただし、連帯保証人は団体信用生命保険にも加入できず住宅ローン控除も受けられないため、どうしても建物や土地の名義をどちらか片方だけにしたいという場合などを除いて、ほかの借り入れ方法の方が良いといえるでしょう。
近年は共働きの夫婦が増えていることもあって、住宅ローンの借り入れ方法も多種多様となりつつあります。
特に、ペアローンを組む方や連帯債務型を選ぶ方、連帯保証型を選ぶ方もそれぞれ散見されます。
ただし、これらはどの借り入れ方法を選ぶかによって状況も異なるため、自分たちの返済計画に合わせた選択が必要です。
今後の将来設計なども関わってくるので、子供を持ちたい夫婦はもちろん、両親の介護が待っている夫婦も含めて、慎重にライフプランを練る必要があります。
ぜひ、そこは無理のない借り入れ方法を選ぶようにしましょう。